祭にっぽん

遠音 10.祭りが終わる時

祭りが終わる時 もっちゃんの卒業 てっちゃんが笛を教えた後、もっちゃんに言った事がある。 「こんな状態で、何時までも続けては居られないだろう? そろそろ思い切って突き放せ。 最初は失敗もするだろうさ。 でも失敗を経験し乗…

遠音 8.「へんぽらい」

「へんぽらい」 祭りも終わり落ち着いた頃、かみさんに先立たれた私を気遣って、常連や同級生などが定期的に集う事になった。店の休みの日に、それぞれ飲み物やつまみを持ち寄って昔話に花を咲かせるのだ。 始まりは、下戸のたかちゃん…

遠音 5.笛吹きを労え

笛吹きを労え 笛を伝える 途絶えたんじゃないかと思われた笛吹きが、居たのは意外だった。 名前はもっちゃん。 会所の鍵開けから囃子の指導、祭りの準備から戸締まりまで毎日毎日やっている。 彼が囃子方を志した時、最初は皆きんど…

遠音 3.てっちゃんの決心

てっちゃんの決心 墓地の改修が終わる前に、てっちゃんがやせがまんで盲腸をこじれさせたので、病院での緊急手術に付き添った。死んでもおかしくないという医師の脅かしで、てっちゃんは最悪の事態も覚悟したようだ。私に手帳を渡し、東…

遠音 1.社人町芙蓉亭

社人町芙蓉亭 富士宮市民文化会館の前にあまり目立たない喫茶店がある。 名前は「芙蓉亭」、私の店だ。芙蓉亭の名前には実は二つの意味があって、お盆の頃から晩秋まで大きな花を見せてくれる庭の酔芙蓉と、文化会館の所にあった富士大…