遠音 10.祭りが終わる時 祭りが終わる時 もっちゃんの卒業 てっちゃんが笛を教えた後、もっちゃんに言った事がある。 「こんな状態で、何時までも続けては居られないだろう? そろそろ思い切って突き放せ。 最初は失敗もするだろうさ。 でも失敗を経験し乗… Continue reading “遠音 10.祭りが終わる時”…
遠音 9.閉店 閉店 祭りの魔法 健太と加奈子が結婚するという。願っていた事なので異論は無いが、こいつらいつの間に……。どうやら冷やかされるのが嫌で、年寄りどもには隠して付き合っていたらしい。 あの時の映画の券も、実は店のお客さんに上げ… Continue reading “遠音 9.閉店”…
遠音 8.「へんぽらい」 「へんぽらい」 祭りも終わり落ち着いた頃、かみさんに先立たれた私を気遣って、常連や同級生などが定期的に集う事になった。店の休みの日に、それぞれ飲み物やつまみを持ち寄って昔話に花を咲かせるのだ。 始まりは、下戸のたかちゃん… Continue reading “遠音 8.「へんぽらい」”…
遠音 7.祭り 祭り 祭り準備が進む。 けん坊が率先してもっちゃんの仕事を手伝い、若い者も引っ張られて分担するようになり、もっちゃんは久しぶりに体調を損ねる事もなく準備を完了した。 そして祭りが来た。 山車は会所に置き、先ずは浅間大社に… Continue reading “遠音 7.祭り”…
遠音 6.再起 再起 私は家内が亡くなってから、なかなか立ち直れないで居る。店は一月閉めたままで、再開のめどは立たない。思い出の場所をさ迷いながら、心の中で奈津子に話しかける。あいつならこんな返事を返すだろうなどと思いながら、それを繰り… Continue reading “遠音 6.再起”…
遠音 5.笛吹きを労え 笛吹きを労え 笛を伝える 途絶えたんじゃないかと思われた笛吹きが、居たのは意外だった。 名前はもっちゃん。 会所の鍵開けから囃子の指導、祭りの準備から戸締まりまで毎日毎日やっている。 彼が囃子方を志した時、最初は皆きんど… Continue reading “遠音 5.笛吹きを労え”…
遠音 4.別れ 別れ 奈津子はてっちゃんの入院中に幸子さんと親しくなったようだ。 てっちゃんの術後の恢復が順調だったので、買い物や息抜きで町を案内しながら幼なじみのてっちゃんの事、自分たち夫婦の事を話したらしい。 リーダー的な存在だった… Continue reading “遠音 4.別れ”…
遠音 3.てっちゃんの決心 てっちゃんの決心 墓地の改修が終わる前に、てっちゃんがやせがまんで盲腸をこじれさせたので、病院での緊急手術に付き添った。死んでもおかしくないという医師の脅かしで、てっちゃんは最悪の事態も覚悟したようだ。私に手帳を渡し、東… Continue reading “遠音 3.てっちゃんの決心”…
遠音 2.橋の上で 橋の上で 祭り初日に、幼なじみのてっちゃんが帰ってきた。以前会ったのは奈津子と結婚する前だったから、何十年ぶりだろう。墓地の修繕と寺への永代供養のお願いで、しばらく滞在するという。 奈津子の実家が空いているのでそこに泊ま… Continue reading “遠音 2.橋の上で”…
遠音 1.社人町芙蓉亭 社人町芙蓉亭 富士宮市民文化会館の前にあまり目立たない喫茶店がある。 名前は「芙蓉亭」、私の店だ。芙蓉亭の名前には実は二つの意味があって、お盆の頃から晩秋まで大きな花を見せてくれる庭の酔芙蓉と、文化会館の所にあった富士大… Continue reading “遠音 1.社人町芙蓉亭”…